理事会声明:金パラの逆ザヤを即刻解消するよう緊急再改定を求める(2019年12月21日)

協会・保団連では12月上旬に金パラ実勢価格調査を行い、全国から2,000件を超す納入価格が寄せられ、その金額は7万円に迫る勢いです。逆ザヤによる年間損失額は450億円を超える見込みです。いくら診療報酬本体が引き上げられても、逆ザヤが大きければ経営にも、患者さんに提供する医療にも、影響を及ぼすことは必至です。協会ではこのような状況を鑑み、緊急の再改定を求める理事会声明を発出し、厚労大臣や中医協会長などの関係先に送付しました。

金パラの逆ザヤを即刻解消するよう緊急再改定を求める

逆ザヤ額446億円。驚くべき数字だ。現状の価格高騰が持続した場合の年間の歯科医院、歯科病院が被る損害額を意味する。長崎県保険医協会が保団連、全国の保険医協会・医会に呼びかけて12月から始めた、12%歯科用金銀パラジウム合金(金パラ)実勢価格調査にもとづく数値だ。厚労省は10月からの金パラの告示価格を1g 1,458円(30g 43,740円)から1g1,675円(30g50,250円)へと14.88%引き上げた。ところが10月以降も金・パラジウムの市場価格高騰が続き、現在の金パラの実勢価格は30g65,000円(税込)を超え、医院によっては70,000円に迫る危機的状況だ。引き上げ後わずか3カ月で、111億円の損害が生じたのだ。
そもそも歯科保険医療において、公定価格が購入価格を下回るという事態を、長年にわたって放置してきた国・厚労省の責任は一体誰がどう取るのだろうか。ガソリン価格や航空会社国際線の燃油サーチャージなどは原油価格に即座に連動する仕組みになっている。民間会社では可能な制度が、公的医療保険では何故できないのか。怠慢以外の何物でもない。随時改定における金・パラジウムの価格調査も情報公開に応じずブラックボックスだ。透明性と公正さが求められる行政の根幹にかかわる事態だ。
20年度の診療報酬の本体部分のアップ率が先週発表された。歯科0.59%引き上げという。金額にして180億円弱になる。一方で金パラ使用による損失額は446億円だ。マイナス1.53%に相当する金額だ。永年にわたって低診療報酬に甘んじてきた歯科界に対する強烈なカウンターパンチだ。
2020年4月改定での金パラ告示価格が、半年前の2019年9月以前の素材価格調査をもとに決定されるなら、場合によっては引き上げが見送られる可能性すらある。抜本的な制度改善は当然だが、現在の理不尽な危機的状況を放置することは到底許されない。
金パラ告示価格の一刻も早い再改定を求めるものである。

以上

2019年12月21日 長崎県保険医協会第1回理事会

長崎県保険医協会
会 長  本田孝也