医療法人の経営情報報告制度について

【協会新聞に掲載した記事】
①【解説】原則全医療法人に詳細な経営情報提出を義務付け 嶋顧問税理士
②【税務ワンポイント】医療法人に「詳細な経営情報提出」の義務付け 嶋顧問税理士

資料「経営情報」に関する県への報告(長崎県ホームページ
【県に提出する必要な書類等】
 1)病院・診療所に係る経営情報の報告
 2)医療法人に関する情報の調査及び分析等について
 3)医療法人の決算届(事業報告書等)の閲覧について(令和4年度分)
 4)G-MISによる事業報告書等の電子届出に関するQ&A
 5)決算届(事業報告書等の届出)
 6)各医療法人の決算届(事業報告書等)

 

【医療法人の経営情報報告顛末記(長崎保険医新聞1月号より)】

本田孝也(長崎市・本田内科医院院長)

 私が先代の父の診療所を継いで開業したとき、それまでの個人診療所から医療法人に切替えた。医療法人社団三和会 本田内科医院。それから28年の歳月が過ぎ、医療を取り巻く環境もずいぶんと様変わりした。

2023年8月に決算期を迎える医療法人から病院・診療所(医科・歯科)の経営情報の報告が義務化された。詳細は長崎県のホームページの「病院・診療所に係る経営情報の報告」*1)に解説されている。
当院の決算月は8月である。診療所は3カ月以内に都道府県宛に経営情報を報告しなければならないので11月末日が期限となる。当院が会計業務を委託しているH税理士事務所のYさんが相談にのってくれた。期限について尋ねると「9月から10月で申告の決算がまとまって、それから1カ月以内に作って出す。結構バタバタですね」とのこと。確かに3カ月以内という締め切りは相当厳しい。まだ経営情報を報告していない医療機関は、決算月がまだ先でも一度入力様式(後述)をダウンロードして中身を確認しておくことをお勧めしたい。
報告はG-MISあるいは紙での提出となる(図1)。

図1 経営情報の報告

 「G-MISなら毎日使っているので楽勝」と思いきや、経営情報の報告には新型コロナウイルス感染症対策用とは別の医療法人用のG-MIS(以下、法人G-MIS)を用いる。 2022年に県より法人G-MISを利用するかどうかのアンケートが送付されており、法人用アカウントを取得すれば法人G-MISで報告書を提出することができる。当院では法人G-MISを「希望しない」と回答していたので、紙で経営報告を提出した。
報告書はエクセルに入力して作成する。エクセルシートは厚生労働省のホームページの「医療法人に関する情報の調査及び分析等について」*2)の「様式」からダウンロードして入手する。
診療所は【直接入力用】の4.「様式2-2[Excel形式:291KB] ※ 経過措置を使用する。2024年8月以降は経過措置のとれた3.「様式2」を使うことになる。入力項目には「任意記載」という項目があり、これは記載してもよいし、記載しなくてもよい。経過措置の「様式2-2」は「任意記載」の入力項目が多い点が「様式2」と異なる。
なお、様式の関数が一部修正されたので、10月31日以前にダウンロードした場合は、最新の様式を改めてダウンロードする必要がある。
報告用のエクセルシートには【会計ソフト連携用】もあるがYさんによると、「様式2-2」の項目の中には会計ソフトにないものや名称が異なるものがあり、使い方もよくわからないので【直接入力用】のほうを使っているとのことであった。
「様式2-2」の1ページ目は「経営状況に関する情報(診療所)」。決算書の項目に似ているが、役員報酬、給料、賞与など決算書にはない項目がある。これらの項目は「任意記載」ではないので、必ず入力しなくてはならない(図2)。

図2 様式2-2 1ページ 経営状況に関する情報(診療所)より

 入力項目の中の医療法人整理番号は、法人G-MISにログインするか、長崎県のホームページの「医療法人の決算届(事業報告書等)の閲覧について(令和4年度分)」*3)から確認することができる。病床・外来管理番号は無床診療所では空欄のままでよい。法人G-MISのアカウントがあるかどうかが不明の場合には県の医療政策課に電話すれば教えてくれる。新規に法人G-MISを利用する手続きは「G-MISによる事業報告書等の電子届出に関するQ&A」*4)に掲載されている。
2ページ目は「職種別給与総額及びその人数に関する情報(診療所)」。職種ごとに給料、賞与の額を記入する(図3)。

図3 様式2-2 2ページ 職種別給与総額及びその人数に関する情報(診療所)より

 給与、賞与の情報は決算書にはなく、入力するためには給与台帳から集計する必要がある。人数は7月1日時点の人数で、非常勤職員は常勤換算して入力する。
決算届(事業報告書等の届出)」*5)に示されているように、既に2022年度より医療法人の決算届(事業報告書等)の報告が義務化され(図1参照)、結果は「各医療法人の決算届(事業報告書等)」*6)から決算書の内容がホームページ上に公開され、だれでも閲覧することができる。役員報酬や給料の情報も公開されるのかと心配になり、医療政策課に問い合わせたところ、「経営情報については、ホームページで公開する予定はない」との回答であった。しかし、今回義務化された経営情報の報告は決算届より更に詳細な内容になっており、医療法人の経営状況はガラス張りにされるといってもよい。この制度の目的は「医療の現状と実態を把握するために必要な情報を収集し、政策の企画・立案に活用するとともに、国民に対して丁寧に説明すること」とされているが、国が「丁寧な説明」という文言を使うときにはろくなことはない。財務省の財政制度等審議会が「診療所の経営状況は極めて良好」として、診療所の報酬単価を5.5%程度と大幅に引き下げるよう求めたことは記憶に新しい。本制度が医療費抑制のために悪用されないように重々注意を払い、監視していく必要があろう。