被爆体験者訴訟の福岡高裁判決を受けて談話を発表(2018年12月13日)

長崎県保険医協会は12月13日、被爆体験者訴訟の福岡高裁判決を受けて談話を発表しました。
【声明】

福岡高裁の被爆体験者訴訟控訴審判決に強く抗議する

2018年12月13日
長崎県保険医協会
会長 本田 孝也

被爆体験者訴訟第2陣の控訴審において、福岡高裁は長崎地裁で勝訴した原告10人の推定被曝線量を18.7mSvと下方修正したうえで「100ミリシーベルト以下の低線量被曝によって健康被害が生じるという科学的知見が確立しているとは言えない」として10人の地裁判決を取り消し、原告161人全員の敗訴判決を言い渡した。
判決は原告の提出した意見を悉く採用せず、被告意見を一方的に採用したもので、著しく公平性を欠くものである。
原告らは放射能に汚染された水を飲み、食物を食べて生活したのだから内部被曝の事実は明白であるにもかかわらず、「被曝線量は、長期的にみてもかなり微量にとどまる可能性が高く」と決めつけている。
被爆体験者にみられた下痢、脱毛等の急性期症状についても聞き取り調査によるバイアスが介在している可能性を否定できないとして、「放射線に起因する症状が発現したと認めることはできない」と切り捨てた。
被爆体験者訴訟は被爆未指定地域で原爆にあった住民が被爆者健康手帳の交付を求めて起こした裁判である。被爆者であるかどうかを争っているもので被曝線量を争っているのではない。判決は被爆した事実は認めながらも被曝線量が100mSvに満たないという理由で請求を却下している。既に被爆者と認められている1号被爆者も2号被爆者も被曝線量は問われていない。
福岡高裁が下方修正した18.7mSvは、胸部レントゲン(被曝線量0.06mSv)を1年間365日、毎日撮影し続けた場合の被曝線量に相当する。100mSvに満たないから健康影響がないというのは詭弁に過ぎない。
当会は福岡高裁の不当判決に強く抗議するとともに、最高裁において公正なる司法判断が下されることを望むものである。

以上