無影燈

2022年8月号掲載

元首相というこれ以上政治的な人いないだろうという対象を銃殺しながら、事件直後は、母親が入れ込んだ統一教会絡みの因果で済みそうだった。その宗教団体が金銭的にも人的にも多数の政治家と関係し、政治家も教会に祝電を送るなど日常的な関係になっていることが判明するに及んで、やっぱり政治の問題なのだと再認識した。
統一教会が希望し、所轄の文科省がなかなか認めて来なかった「統一教会」の名称変更が、安倍政権の時代に叶ったり、警備の元締めである警察庁長官はあの中村氏だったり、元首相に近い人達も怒りの矛先を誰に向けて良いか戸惑っているのではないか。
庶民に、なけなしのお金を差し出させ、一部を政治家に流してお目こぼしを図る。そんな時代劇ばりの話の先が尻すぼみで終わるか注目される。
長崎新幹線が来るのに合わせて、開発工事がたけなわである。長崎市公舎ビルも想像を超えて高く立派だ。その陰で、老舗のお茶屋さんやケーキ屋さん倒産の知らせもある。とりあえず手を挙げてみたIRも、ダチョウ倶楽部の「どうぞどうぞ」みたいに押し付けられた感が出てきたところにハウステンボスの売却話である。因果はめぐり、肝心な時に言い出しっぺはいなくなっているのが世の常である。

(木)

2022年7月号掲載

「アベノミクスは買いだ」の安倍元首相をもじって、「岸田に投資を」と英国の講演で呼びかけ失笑を買った岸田首相。新しい資本主義の柱として資産所得倍増プランを打ち出した。
個人資産2000兆円のうち預貯金1000兆円を投資に回させようというもの。そもそも貯蓄すらない国民が30%といわれる中で、誰に向かっての話なのか。動かない休眠資産をたたき起こし、株式市場の活性化につなげる腹だ。外資に買収された有名企業が増え、日本の資産を狙う企業も暗躍する中、さらに国民の金まで差し出すとは。IR同様、バクチに巻き込むようなものだ。
一方で中高生に投資の授業も始まった。一定の金融教育は必要としても、実利的要素に満ちた株や投信などの話は子どもには無縁のはず。投資へのハードルを下げてリスクにさらし、社会保障の自己責任化を強めるための施策としか思えない。「若者よ夢より金だ」とは世も末だ。
虚業栄えて国滅ぶ。本来は実業を重視し、実体経済の成長をはかることこそが必要だ。安倍政権以降、永年にわたり成長戦略を掲げたが、いっこうに成長したとは聞かない。賃金は下落し、世界での地位も低下の一途をたどる。政策立案に携わる官僚も政府も国民の生活など全く分かっていない。退場してもらうほかない。

(人)

2022年6月号掲載

4年前の改定で妊産婦加算と言う妊産婦の受診を抑制させかねない制度が導入され、様々な批判のもと廃止されたが、今次改定でもマイナンバーカードで受診すればかえって診療費が増加するという制度が導入された。国はマイナンバーカード使用を普及させたいのかそうでないのか判断に苦しむ。診療費が高くなれば手続きの終わった人でも持っていないとして受診する可能性もありうる。2年後はカードリーダーのない医療機関は減点にでもするのだろうか。
保団連や九州ブロック会議でも度々要請したレセプト電算処理システム用コードは増やさないでほしいという要望を全く無視した、さらなる導入もなされた。審査支払機関の仕事量を減らし人件費を減らす分各医療機関の事務量を増やし、負担を医療機関に負わせる改悪としか思えない。
今年10月からの75歳以上窓口負担の2割化に伴う配慮措置導入はさらなる窓口・医療事務の混乱と仕事量増加を招くであろう。高齢患者すべてが後期高齢者医療広域連合に申請をすれば増加負担分が償還されるとする部分を十分理解できるかどうか疑問であり、還付金詐欺の温床にも成り兼ねない。5月は改定の影響か請求受付がシステム障害で滞った。10月にまた同様なことが起こる気がする。

(一)

2022年5月号掲載

村中璃子氏がドイツから帰国する予定の飛行機がウクライナ紛争のあおりを受けて2度も欠航となった。ウクライナはもともとワクチンに対する抵抗感が強い国で、ヨーロッパの中でもコロナワクチンの接種率が最も低い国だ。そこから500万人を超える難民が国外に避難した。マスクを着用していない人も多い。コロナどころではないだろう。
村中氏も、マスク無しのウクライナ難民と共にチェコから7時間を旅し、その後、3回ほど検査したが幸いコロナは陰性だったという。
未だ衰えをみせないコロナパンデミック。ただ、対応は国によって異なる。ワクチン接種を推進することは一致しているが、欧米諸国はコロナとの共存の方向へ舵をきった。社会経済活動を優先し、コロナに係る規制も順次撤廃されている。対照的なのがゼロコロナ政策を貫く中国。上海市をロックダウンしたが感染者は50万人を突破した。感染は止まらず北京をはじめ中国全土に拡大する勢いだ。
興味深いのが韓国。3月には1日の新規感染者数が50万人にも上ったにもかかわらず規制を緩和。飲食店も普通に営業しており、それでいて新規感染者数は減少。4月末には2カ月半ぶりに4万人を下回った。背景にあるのは検査数の多さだ。
感染の再拡大が始まった長崎。対応や如何に。

(孝)

2022年4月号掲載

テロの理由を何度聞いても複雑で理解しがたい中東事情と違い、ロシアのウクライナ侵攻は、21世紀の今、こんな単純な理屈で戦争が起きるのかと驚いてしまう。ロシア側は自衛のためと言うが、プーチンは、もし自分がウクライナの大統領だったら、さっさとNATOに加盟して西側の協力を取付け、ロシアに奪われたクリミアを取り戻すぐらいのことはすると恐れたのだろう。
チェチェン、グルジアのように上手く事が運ばなかったのは、スマホのせいかもしれない。ウクライナの状況がスマホの映像でほぼリアルタイムに世界に知れ渡るところが、これまでの戦争と違う。空爆後の悲惨な街の様子というのは、これまでもニュースで見かけてきたが、空気を裂く音がしたと同時に身を伏せる暇もなく目の前のビルで爆発が起こる。一瞬で人が雑に大勢傷つく。ゼレンスキー大統領の相手の琴線に触れるエピソードを交えながらの演説も、戦況を有利に運び経済制裁で関係国結束の一助になっている。
ロシア国内の情報統制の理不尽さはロシア国外にいる人達のほうが知ることになっている。ジャーナリズムが細る国では権力の暴走を許す。忖度を良しとする日本も例外ではあるまい。

(木)

2022年3月号掲載

「憲法改正」の動きが急だ。衆院選での維新の会の躍進で、衆院憲法審査会が始まった。論点は国会審議のオンライン化。定足数を定めた56条1項に関わるとの理由だ。が、要はコロナを口実に、憲法改正につなげることなのだ。
14年安倍内閣は歴代内閣が守ってきた憲法解釈を変更し、集団的自衛権を認める閣議決定を行った。専門家の意見も無視し、内閣の一存だけで平和国家の根幹を揺るがすという、暴挙だった。その安倍氏がまた、最近の国際情勢の危機に乗じて、敵基地攻撃論や核共有発言など憲法に反する動きを強めている。
参院選は改憲派が3分の2の議席を占めるかが大きな焦点になる。この間、憲法問題への国民とメディアの関心は低い。東京五輪番組の字幕虚偽問題に揺れるNHK。安倍内閣以来政権との距離に腐心し、政権監視の役を降りた感の民放テレビ。新聞離れによる経営危機を多角経営で打開すべく、五輪スポンサーとして開催を側面支援した五大新聞。彼らにとっても言論機関としての気骨を示すのは今のはずだ。「憲法くん」で知られるテレビに出ない芸人・松元ヒロ。自ら憲法になりきり舞台から政治家の嘘を笑い飛ばす。同調圧力に屈しない姿は清々しい。われわれは今、何をなすべきか。キング牧師のことば「究極の悲劇は善人の沈黙である」をいま一度噛みしめたい。

(人)

2022年2月号掲載

井伏鱒二の小説『黒い雨』は実在の人物の日記に基づいた真実の物語である。田中好子主演で映画化された。主人公の矢須子は原爆投下時には遠方におり、直爆を免れたものの、小舟にのって広島市に向かう途中に黒い雨にあった。防空頭巾をかぶり、うつろな目で空を見上げる矢須子の頬に落ちる黒い雨が印象的だった。
「降ってきたのは万年筆ぐらいな太さの棒のような雨であった。真夏だというのに、ぞくぞくするほど寒かった」。
長崎大学病院で原爆の直撃を受け、永井隆博士らとともに金毘羅山の山麓に避難した調来助教授の日記にも雨の様子が記されている。
「時雨みたいな雨も降り出した。山上の負傷者は雨と風とで皆寒そうに震えている」真夏の広島と長崎。普通でない雨に人々の心は氷のような寒さを覚えたのだろうか。
黒い雨を浴びた矢須子は4年後原爆症を発症した。発熱、脱毛、難治性の肛門周囲膿瘍が悪化し次第に衰弱する。「激痛こみあげ、矢須子さんの苦しみよう痛ましかりき」。
同じころ、黒い雨が降った長崎の間の瀬地区住民の手記。「次男は4年間下半身が腐る奇病で寝込んだあと、痔瘻が悪化して死にました」。
広島「黒い雨」高裁判決を受け、昨年暮れに長崎を外す被爆者認定指針の改定案が示された。分断を許してはならない。

(孝)

2022年1月号掲載

2011年の映画コンテイジョンは中国が主張する蝙蝠からの自然発生説を取れば今回のCOVID-19の流行によく似ている。
一方アメリカが主張する武漢ウイルス研究所からの流出説は1995年の映画アウトブレイクを思い出させるが、BSL-4が長崎にも建設されその恐ろしさが心配される。流出説にしても多くの研究員はアメリカ留学の経験を持っていると言われ、アメリカCDCのファウチ所長もコロナウイルス研究に資金援助をしたことがわかっている。
またCDCも2019年の時点でPCR検査は40回の増幅ではインフルエンザでも陽性になるとして擬陽性も多いのではないかと思われる。
インターネットジャーナリスト田中宇はこれは新たな生物兵器戦争で、第3次世界大戦のようなものだと書いている。今や多くの日本人は第2次世界大戦を直接には知らないが生活の制限、景気の後退、数十兆を要するワクチン接種、それをはるかに上回る治療・防疫に要する膨大な出費を考えるとあながち否定できない。
長崎大学の森内浩幸教授は折につけこのコロナウイルスは数年後には季節性の風邪ウイルスになると講演されていた。最新のオミクロン株は感染力は強いが、重症化しにくいとのことで、すでに森内教授が言われる単なる風邪ウイルスになったのかもしれない。
何が本当にしろ、このパンデミックが早く終息し、一日も早く元の生活に戻ることを期待したい。

(一)

2021年12月号掲載

国会議員になりたい人は次のように分類される。自民党から出られる人、自民党から出たいが地盤看板カバンがなくて自民党から出られない人、自民党からは出たくないが共産党とは仲良しとは思われたくない人、共産党と仲良くしてもかまわない人の4つである。選挙のたびに、政党が割拠したり、当選後に議員が所属政党を変えたりするが、さもありなんと思う。
日本が世界でもっとも成功した社会主義国家と言われた頃があった。国民皆保険、道路等のインフラの充実がその要因である。貧富の差も小さく、当時は世界からみたら日本は理想の社会主義国家だったのかもしれない。
選挙時のマスコミ報道は制限されて以降、投票率は下がる一方だ。小選挙区制も相まって、「国民の基本的人権は守ります」「政府は勝手なことをやっちゃいけません」「戦争で物事を解決してはいけません」と決めている憲法を改悪し、「公共の利益を害さない限り」の言葉を全条文につけようする議員が多数となった。
今や世界は民主主義国家よりも独裁国家の数のほうが多い。日本も、政党名に民主を謳っている政党があるのに、選挙のたびに独裁国の様相に近づくという不思議なことになっている。憲法が変われば、それは決定的となるだろう。

(木)

2021年11月号掲載

人間中心の経済を唱え、人間と人間の共生、人間と自然の共生を終生訴えた経済評論家の内橋克人氏が亡くなった。経済に魂を吹き込んだ人だ。ものづくりの現場を丹念に取材し、長年にわたり新自由主義への批判と警鐘を鳴らし続けた。神戸空襲の過酷な体験を礎にした、人間の尊厳に対するゆるぎない信念が根底にある。
文藝春秋11月号での矢野康治財務事務次官の発言が物議を醸した。与野党の経済対策を「ばらまき」と批判したのだ。菅官房長官の秘書官を務め、森友学園問題の文書改ざん時には官房長の職にあり、内部調査の責任者として改ざん隠蔽に加担した。事務次官就任はその論功行賞だ。自死した赤木俊夫さんの妻の文書開示要求にも麻生大臣とともに背を向けた。人として、官僚としての気概もない。
岸田内閣の世襲率は57%だった。自民党の世襲国会議員は3割を超す。諸外国では世襲政治家は極めてまれなのに、何という後進性だろう。首相自身が東京生まれ東京育ちの三世議員。広島選挙区選出だが被爆者に寄り添わず、核兵器禁止条約に否定的だ。
経済の語源、経世済民とは世を治め民の苦しみを救うことだ。エリート政治家と官僚に欠落するのは国民への共感だ。民を置き去りにした経済対策はありえない。コロナ禍で傷ついた国民への支援は待ったなしだ。

(人)

2021年10月号掲載

厚労省は今年8月に2020年度の児童虐待相談対応件数が過去最高の20万5029件と公表した。虐待児が虐待児を生むというストックホルム症候群(の亜種)だけでは説明できない増加ではないだろうか。
ユニバース25という1970年代の実験結果が今の日本の現況を反映している気がする。8匹のマウスをいわばエデンの園に放すと2200匹まで増加するがその後絶滅するという驚異の結果で、その過程で引きこもり、育児放棄、虐待、性倒錯などが起こった。原因は力関係による階層分離、貧富の差とされる。今の日本の問題点を多く映しているように思われる。興味ある方はネットで検索されたい。
アメリカでは40年以上も前から虐待児を救うボランティア団体があったが、日本では犬猫を虐待から守る団体はあっても虐待児を保護する団体はあまり聞かない。
日本を貧困に陥れたといわれる竹中元金融担当大臣による非正規雇用の拡大政策で事態は悪化したと思われる。彼が率いるパソナグループは資本家の利益になっても被雇用者は疲弊し、貧富の差は増大している。何とかこの状況を打開する必要がある。次期首相は掲載時には決定しているのであろうが、彼の影響が少ない方になってもらいたいものである。

(一)

2021年9月号掲載

8月9日に放送されたNHKスペシャル「原爆初動調査 隠された真実」は原爆投下直後に米軍が残留放射線の人体影響を隠蔽しようとする様子を生々しく伝えている。
番組に登場するドナルド・コリンズは米国マンハッタン調査団のメンバーだった。1945年9月26日に西山水源地のダムで非常に強い放射線を観測。28日には矢上から戸石、愛野を通って島原まで、ジープで移動しながら放射線を測定した。
コリンズは調査に向かう前に責任者から「君たちの任務は、放射能がないことを証明することである」と言われ、「我々は残留放射線を測るように命令を受けたのですが」と反論すると「放射線量が高くないことを証明しろ」と言われたと証言する。
原爆調査報告書は「残留放射線の測定結果と、人への被害の臨床的な証拠がないことを考えると、爆発後、有害量の残留放射線が存在した事実はない」と結んでいる。
残留放射線の人体影響を隠蔽する米軍の方針は、そのまま日本政府に受け継がれた。
8月9日、被爆5団体が被爆体験者の救済を訴えたのに対して田村厚生労働大臣は「健康影響の観点から問題となる量の放射線被曝があったという科学的知見は得られていない」と述べた。76年前の米軍の報告書そのままではないか。なんとかこの誤った流れを断ち切りたい。

(孝)