声明:厚労省は、歯科材料料改定のプロセスと根拠を明らかにし、「金パラ」価格逆ザヤを即刻解消せよ(2019年9月10日)

2019年10月実施の歯科材料料改定では、歯科界で大きな問題になっている「金パラ価格の逆ザヤ」問題は依然として解消されず、歯科医療機関の経営は圧迫され、患者に提供する医療の質にも影響しかねない状況です。
協会ではこのような状況を鑑み、別紙の声明を加藤信勝厚生労働大臣に送付しました。併せて、中医協会長や県選出国会議員等の関係先にも送付し理解を求めました。

厚生労働大臣 加藤勝信殿

厚労省は、歯科材料料改定のプロセスと根拠を明らかにし、
「金パラ」価格逆ザヤを即刻解消せよ

 福岡県歯科保険医協会の調査では、昨年9月からの半年間で金パラの市場価格が37~38%も上昇した。逆ザヤによる歯科医院の赤字の増大と診療の質の低下が危惧される。また、過去10年間でも、これによる歯科医院側の逆ザヤは約250億円に上っている。
厚労省は、この異常な状況にもかかわらず今年4月の随時改定を見送った上、今回も根本的な対策を講じず告示価格を1g 1,458円から1,675円、14.88%の引き上げとした。しかし8月末の金パラの実勢価格は1,830円/1g台であり依然として大幅な乖離が存在する。
ましてや、今回の価格改定は、10月からの消費税増税と同時実施となり、歯科医療機関が一層の経済的負担を強いられる中での改定である。このままでは、患者に提供する医療の質にも影響しかねない。
根本的な問題は、歯科医療機関は金銀パラジウム合金を製品として購入しているのに対し、基準材料価格改定及び6ヵ月ごとに行われる随時改定では、主に合金の価格ではなく、金、銀、パラジウムそれぞれの「素材価格」を参照しているに過ぎず、その調査と決定のプロセスも不透明であることにある。現状の方法を継続する以上、合金価格の方が素材価格より高価になる市場価格と告示価格に乖離が生じることは自明の理である。また素材調査時点と改定時のタイムラグが価格に及ぼす影響ははかりしれない。
このような告示価格改定方法の抜本的な見直しなくして、逆ザヤを現場に負わせている現状は変わらない。歯科保険材料は元来適正価格で安定的供給が担保されるべきものである。世界経済の混乱による金の投機的側面の増大に加え、パラジウムの工業分野での需要増加等がもたらす価格への影響は大きい。12%金銀パラジウム合金はもはや歯科保険診療本来の目的を達しえない。
政策的責任を負う厚労省に対し以下の事項を要求する。

1.歯科医療機関が抱える金パラ逆ザヤ問題を一刻も早く解消すること
2.急激な価格変動にきめ細かく対応出来るシステムを早急に構築すること
3.金パラ告示価格改定に関する市場価格調査結果や材料料決定のプロセスと根拠を明らかにすること
4.随時改定の期間を現行の6ヵ月から短縮すること
5.金パラに代わる歯科材料を早急に検討すること

 2019年9月10日 第2回常任理事会

長崎県保険医協会
会 長  本田孝也