【政策解説】来年3月より「オンライン資格確認」が可能に

窓口業務が簡素化し便利になるのか?
顔認証付きカードリーダー無償提供も開始

来年3月より「オンライン資格確認」が始まる。「オンライン資格確認」とは、文字通りオンラインで健康保険証(以下、保険証)の資格を確認するもので、これまでのように期限切れによるレセプトの返戻がなくなるメリットは大きい。確かに便利になるが手放しでは喜べない。
資格確認は保険証またはマイナンバーカードを顔認証付きカードリーダーで読み込んで行う。資格確認だけならば保険証で行えばよく、マイナンバーカードを「オンライン資格確認」に用いるのはその普及が目的である。マイナンバーカードは2016年1月から交付が開始された。来年3月までに6000~7000万枚の交付を目標としているが、9月1日現在の交付状況は2500万枚(19.4%)と目標には程遠い。
「オンライン資格確認」のための顔認証付きカードリーダーは無償で提供される。しかし、何故顔認証が必要なのか疑問が残る。マイナンバーカードは写真付きなので、わざわざ機械で認証しなくても顔を見れば本人かどうかは一目瞭然である。これまでは窓口で保険証を渡せば済んでいたのに、わざわざ機械の前で顔認証させられる患者こそ迷惑である。また、顔認証のためにマスクを外すのであれば、感染防御の観点からもよろしくない。
マイナンバーカードを使えばレセコンへの保険証番号、住所、氏名等の最新の保険資格を自動的に取得できるという。しかし、マイナンバーカードを用いなくても、現在検討されているように保険証にQRコードを印刷し、それを読み込めばすむことである。
個人情報の漏洩や目的外使用に対する懸念も根強い。マイナンバーカードで認証すれば過去の薬剤情報や特定検診の情報を閲覧することができる。薬剤情報はレセプトから取得したものである。これはマイナンバーとレセプト情報が紐づけされていることを意味する。日医の石川広己常任理事も昨年3月の記者会見で「マイナンバーと医療情報を紐づけることは断じて容認しないという日医の姿勢はこれまでも一貫しており、今後も変わることはない」と強調した。それがいつの間にか、なし崩し的に認められてしまったことは大きな問題といえよう。
医療情報の閲覧には患者の同意が必要であるが、同意は医療機関の窓口で顔認証付きカードリーダーの画面の「はい」「いいえ」を選択して行う。しかし、ここで「いいえ」を選ぶのは患者として難しいのではなかろうか。
悪いことばかりではない。「オンライン資格確認」のシステムを活用すれば、市区町村民税非課税世帯の負担軽減や国保料滞納による事実上の無保険者の把握も可能となる。既に患者の投薬情報を全国リアルタイムで管理している韓国の成功例のように、上手に使えば薬剤情報や特定検診の情報の閲覧も有益である。国や保険者の思惑によるものではなく、医療機関そして患者の立場から「オンライン資格確認」を運用することが重要であると思われる。

(本田孝也記)

詳細は厚生労働省ホームページをご覧ください。
また申請の手順をこちらにまとめていますのでご参照ください。