皮膚に住みつくダニ-疥癬虫(ヒゼンダニ)
疥癬(かいせん)は、疥癬虫というダニが皮膚に住みつく病気です。日本では第二次大戦後に流行したので、覚えている方があるかもしれません。最近は海外旅行で感染した人間から、家庭・医療施設・保育園・当直のある職場で広がることが多く、ペットの犬や猫から移ることもあります。
症状は非常に痒い湿疹ですが、普通の湿疹と見分けがつきません。陰嚢や陰茎にポツポツとできる湿疹や、指の間に見られる疥癬トンネルと呼ばれる毛羽立った細い筋だけが、疥癬に特徴的なサインです。皮膚科では皮膚をピンセットでむしり取って、顕微鏡で虫や卵を探します。
疥癬は体長0.3~0.4㎜、卵から親虫になり死ぬまで一生皮膚の表面に近いところにいますが、血を吸う訳ではなく、人間が虫や糞にアレルギー反応を起こして痒くなります。
少し前まで日本には保険適応の薬はありませんでした。そこで六一〇ハップ(むとうはっぷ)という入浴剤が治療に使われていましたが、自殺に利用されたことをきっかけに製造されなくなり、非常に困った時期がありました。幸い、ノーベル賞受賞の大村智博士が発見したイベルメクチンという飲み薬や、他にもフェノトリンという塗り薬が最近保険薬として認められ、これらを週に1回程度、合計2~3回飲んだり塗ったりして、治るようになりました。
湿疹がいつまでも治らず、家族も痒がる時は、一度皮膚科にご相談ください。(2016年8月放送)