鼠径ヘルニア

鼠経ヘルニア

 鼠経ヘルニアとは太ももの付け根、いわゆる鼠径部におなかの中の腸が皮膚の下に出てくる病気です。昔から脱腸と呼ばれていました。子どもと大人ではその原因に違いがありますが、症状は同じです。
子どものヘルニアは胎児期の腹膜鞘状突起遺残という成長過程に発生したものですが、大人のヘルニアは鼠径部の靭帯や筋肉が弱まることで発生します。
初期にはおなかに力を入れると足の付け根あたりが膨らみ、手で押さえるともとに戻りますが、だんだん膨らみが増してきます。手で押さえても元に戻らなくなる状態を嵌頓と言います。強い痛みを伴い、腸閉塞となって緊急手術が必要となる場合もあります。
いずれにしても治療には手術が必要です。子どもの手術はこのヘルニアの袋を切除するだけですが、大人の場合は弱体化した部位の修復が必要で、いろいろな方法があります。最近では腹腔鏡を使いおなかの中からメッシュと言われる人工補強材でふさぐ手術が多く行われています。日帰り手術や数日の入院手術で治療も可能となっていますが、退院後すぐは重いものを持ったり、重労働は避けたほうがいいでしょう。
鼠経部のヘルニアにはそのほかに女性に多い大腿裂孔ヘルニアがあります。これは鼠経ヘルニアよりやや下方から腸が出てきます。嵌頓することが多く、緊急手術を要することが多いので注意が必要です。
いずれにしても鼠径部の盛り上がりには早めの外科受診が必要です。(2019年5月)