手術前後のがん患者の口腔ケア
口の中にはたくさんの細菌が棲んでいます。最近、肺炎、糖尿病、心筋梗塞、リウマチなど、様々な病気の原因に口の中の細菌がかかわっていることが明らかになりました。がんの手術、抗がん剤による化学療法、放射線治療を受ける際にも、口の中を清潔に保ち、虫歯や歯周病の治療をあらかじめ済ませておくことで、合併症を予防・改善できることがわかってきました。現在ではがん治療時の口の健診や管理が健康保険でできるようになりました。この手術前後の口腔ケア管理を周術期(しゅうじゅつき)口腔機能管理と呼んでいます。
周術期口腔機能管理を行うと、手術を受ける場合は、全身麻酔の挿管時に、歯が折れたり抜けたりするのを防ぐことができ、口の中の細菌が原因となる傷口の感染や肺炎を予防することもできます。抗がん剤治療や放射線治療を受ける場合には、副作用である口内炎が軽くなります。また放射線照射の部位や抗がん剤の種類によっては顎の骨がくさる顎骨壊死(がっこつえし)という重篤な合併症が起こることがありますが、その多くを予防することができます。術後合併症が減ると早期退院が可能になります。
がんと診断されてから歯科治療と思っても、歯科医院に行く余裕がないのが現状です。がん治療の時に口の中の細菌が原因で合併症が起こると、がん治療がつらくなるだけでなく、がん治療そのものを中断せざるをえなくなることもあります。口の中に痛みなどの自覚症状がなくても、日頃から定期的に歯科にかかり口の中を健康な状態に保つことが重要です。(2017年2月)