健康一口メモ/苦しむ人に接するヒント

苦しむ人に接するヒント

 精神科の診察では、よくご家族の方などから、本人にどのように接すればいいですかと尋ねられることがあります。多くの場合は見守ってあげるだけで構いません。傍に居てあげたり、吐露される思いを傾聴してあげるだけでも大きな助けになります。もう少し気持ちを和らげる関わりを持ってあげたい時、間違えのない応え方は”感情を返す“という方法です。本人の感情を推し量って、何々で辛いね、何々なことがあって悲しいのねなどと言葉にして返します。

 ただ、例えば、息子が事故で死んでしまった、とても辛いと言われた時に、息子さんが亡くなって辛い気持ちはとてもよく分かりますよという言い方だと、子どもを亡くしたこともないのにどうして自分のことが分かるものかと反発を招きかねません。そんな時は、息子さんを亡くされて辛いんですね。あなたにとって息子さんはかけがえのない存在だったんですねと言うと、経験したことのない出来事であっても、相手と共感的な関わりを持つことができます。そんな風にとっさに言えるだろうかと自信がない方は、息子さんを事故で亡くされたんですね。とても辛いんですねと相手の言葉をそのまま繰り返すだけで構いません。ただ相手の言葉をなぞって返し、気持ちを推測しているだけですが、これだけで十分に共感的な関わりになり、苦しむ人の力になることができるのです。

 ただし自殺や自暴自棄な行動が少しでも心配される時は、躊躇(まよ)わず精神科に相談してください。(2017年7月)