健康一口メモ/物盗られ妄想

物盗られ妄想

 財布や貯金通帳が盗まれたと訴える「物盗られ妄想」は、認知症の方によく見られます。ご本人の記憶の中に「貴重品のしまい場所」があり、そこに貴重品がなかった場合、「誰かが持ち去った」と思いこんでしまいます。「誰が犯人か」と考えが進めば、一番身近にいる人、つまり懸命に世話をしている人が持って行った、と確信してしまいます。疑われた介護者はとても辛い思いをします。しかし認知症のお年寄りにとっては、「いつも置いてあるところに貴重品がない」ということを懸命に理解しようと考え出した結果ということになります。元気な頃には「しまい場所を変えたのかもしれない」、「あのお嫁さんがそんなことをするはずがない」と考えたのでしょうが、認知症になると、そのように考え直す余裕はありません。

 妄想の特徴として、それを否定し訂正しようとしても不可能、ということが挙げられます。「物盗られ妄想」を否定すると「自分のことをちっともわかってくれない」と不満をもたれる危険性もあります。
そのような場合は、ご本人のお話を聞いてみましょう。心ならずも認知症になり、それでも懸命に日々を送っているご本人の不安を思い出し、話を聞いてもらうとよいかと思います。一緒に探していただいて、見つかってもご本人のせいにせず、一緒に喜びましょう。そのような対応で充分でなければ、お一人だけで抱え込まず、早めに精神科の専門医に相談してください。(2017年3月)