筋萎縮性側索硬化症(ALS)
筋肉は骨格と並び全身で最も大きい臓器です。筋肉は生物が生きて食物を得る手段として欠かせない臓器なのです。筋肉は運動神経に支配され、運動神経の活動が途絶えると筋運動も直ちに停止し、筋肉の死へとつながります。
ALS(amyotrophic lateral sclerosis)は全身の筋肉の萎縮が徐々に進行していく病気で、脊髄を含む運動神経細胞が変化して死んでいくために全身の筋肉が徐々に萎縮して運動不全を起こす病気です。初期にはタオルを絞ったり、立つことや歩くことが不自由となり、手や足先がやせてきます。
さらに筋肉の萎縮は全身へと広がり、立つことはおろか歩くことさえ困難になってきます。病気が進行していくと呼吸に関係する筋肉までおかされるため呼吸ができなくなったり、肺炎などの感染症を起こしたりして死に至ります。その経過は3~5年程度といわれますが、最近は呼吸管理がよくなり、10年以上生存することもまれではなくなってきました。アメリカでは戦前の大リーガーの一人、ルー・ゲーリック選手がこの病気で選手生命を絶たれたことからルー・ゲーリック病とも呼ばれています。
この病気は発見されて100年以上が経過するのに多くのなぞを残したままです。なぜ運動神経のみを傷害するのか、なぜ病気の痕跡を残さないのか、なぜ薬剤に反応しないのか、などなど。その点でもこの病気は難病中の難病といえます。
近年、遺伝・生化学などの進展に伴い少しずつ痕跡の発見がなされてきました。一時も早い原因の解明、治療の確立が望まれます。(2015年放送)