内科/誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎

 ものを飲み込むとき、本来、食道に入るべき食べ物や唾液が誤って気管に入ることを誤嚥といいます。誤嚥によっておこる肺炎を誤嚥性肺炎といいます。人口の高齢化で急増し、肺炎による死亡の多くを占める高齢者の肺炎は、そのほとんどが、寝ている間に唾液を誤嚥してしまうために起こるものであることがわかってまいりました。
 誤嚥性肺炎を防ぐポイントは3つあります。まず第1に、歯磨きなどお口のケアを怠ったり、絶食などにより唾液の分泌が低下すると口腔衛生環境が悪化し、肺炎を起こしやすい細菌が口腔咽頭で増えてきます。歯磨きや口の体操など口腔ケアが非常に有効で、定期的な歯科検診をおすすめします。第2に、症状のない無症候性脳梗塞では、気づかれずに嚥下機能が低下し、睡眠中に唾液を誤嚥し、唾液に混入した病原性の細菌が気道内に入りこむことになります。ACE阻害剤と呼ばれる血圧の薬などの薬物療法で嚥下機能を改善させることができるようになりました。第3に、誤嚥により細菌が気道内に入ってしまっても、最終的に、気道の表面に存在する防御機構や咳により、細菌は気道から排除されます。この防御機構の働きを低下させる、低温や乾燥した環境に対しては冬場の保温、加湿が有効です。また、インフルエンザをはじめとするウイルス感染対策として、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンが有効です。
 特に、肺炎を起こしたことがある高齢者の方や、重い病気をお持ちの方は注意が必要ですから、かかりつけ医にご相談ください。

(2010年放送)