子ども医療費助成制度の推移と患者の受診動向の分析

子ども医療費助成制度の推移と患者の受診動向の分析

2017年12月18日
長崎県保険医協会会長
本田孝也

子ども医療費助成制度は年々拡充してきた。しかし一方で、安易な受診や、いわゆるコンビニ受診を増やし、医療費の膨張につながるのではないかという懸念の声も聞かれる。そこで、厚生労働省の統計データから子ども医療費助成制度の推移と患者の受診動向の分析と検証を行った。

図1表1に子ども医療費助成制度の対象年齢(通院)の推移を示す。2002年には助成対象年齢のほとんどが就学前であり、中学生まで助成していたのは3,241自治体のうち、僅か33自治体(1%)に過ぎなかった。それが2016年には1,741自治体のうち、中学生以上の自治体が1,387自治体(80%)と、助成対象年齢の引き上げは年々着実に進行している。

日本の子ども(0~14歳)の人口は、2002年は1,810万人だったのが、2015年には1,589万まで約200万人減少した。一方で、助成対象年齢の引き上げに伴い、助成の対象となる人口は2002年の651万人から2015年には1,425万人と倍増した(表2)。

図2の棒グラフは2002年度から2016年度までの外来レセプト件数の年齢階級別推移を示している。いずれの年齢階級でも外来レセプト件数はほとんど変化していない。ただ、受診率(人口1,000人当たりのレセプト件数)でみると2002年度の7,000件から2015年度には8,400件と微増(1.2倍)しており(表3)、これは、医療費助成制度拡大の影響と考えられる。

図2の折れ線グラフは子どもの医療費(入院+入院外)の推移を示している。概算医療費(全年齢の総医療費)は2002年度から2016年度までの14年間で11.3兆円も増加している(表4)。これに対して子どもの医療費の増加は0.44兆円(4,400億円)に過ぎない。増加した4,400億円の内訳は、病院、診療所が1,700億円、歯科が300億円、調剤薬局が2,400億円である。

それでは、医療費助成制度を拡大すると時間外の受診が増えるかどうか検証した。

図3は2006年から2016までの各年の6月の年齢階級別、時間外受診件数の集計結果である(表5)。時間外・夜間・深夜の加算件数の合計から計算した(表6)。医療費助成制度は拡大し、助成対象人口は増加しているにも関わらず、いずれの年齢階級でも時間外受診件数はむしろ減少傾向にある。これは、医療費助成制度の拡大によって必要な受診が確保されたために疾病の重症化が防止され、時間外受診が減少した結果であると考えられる。

図4は2004年度からの長崎市夜間急患センターの受診者数をグラフ化したものである。長崎市では2005年に就学前まで、2016年に小学校卒業まで助成対象年齢が引き上げられ、2007年に現物給付化が行われたが、いずれも受診者数の増加は認められていない。図5は長崎市に諫早市、佐世保市の急患センターの受診者数の推移を加え、比較したものである。諫早市、佐世保市では2016年に情勢対象年齢が中学校卒業までに引き上げられたが、受診者数の増加は認められなかった。

医療費助成制度を拡大しても、安易な受診やコンビニ受診、医療費膨張にはつながらないことが、厚生労働省のデータ、長崎県下のデータからも統計的に証明された。

以上


出典及び計算に用いた資料

<図1、表1>
乳幼児等医療費に対する援助の実施状況(厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健 調べ)。2011年まで:保団連集計資料より作成、2012年より:長崎県保険医協会集計

<表2>
国立社会保障・人口問題研究所 人口統計資料集

<図2、図3、表3~6>
算医療費データベース(メディアス)、制度別医療機関種類別 医療費、平成12年4月から平成20年3月まで;2005a.xls、平成20年4月から平成29年3月まで;2014a.xls
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